茶房 とげとげ庵

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zoom RSS 東からの使者

<<   作成日時 : 2016/10/16 20:18   >>

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 北関東にひたひたと寒さが忍び寄ってきた。残暑を彼方へと追いやった北風は、キンモクセイやらイチョウの実やら畑の野焼きやらの微粒子を帯びて関東平野を駆け巡る。自由落下したどんぐりに頭を叩かれて天を仰げば、快晴の青空をイイギリの実が赤く彩っていた。枯れ枝に陣取ったノシメトンボも、木間に佇むジョロウグモも、草陰に歌うコオロギも、生命の猶予はあとわずか。寒さはヒトに対してもまた容赦を知らない。木枯らし未満の風といえども、ジャケットを引っ張り出させるには十分事足りる。日増しに降下する気温が、よろずの物体のみならず精神までも冷却していく。心に着せるジャケットはいずこにあるのやら。
 東の町から、古い友人が遊びに来てくれた。克明に記述するならば二名様でいらっしゃったのだが、ご両人の仲はうかがいしれない。いずれも学問の道を志しており、情報収集もかねての来筑とのことである。他愛ない会話の端々に顔をのぞかせる将来の不安には、大いに共感すべきものがあった。昨今の経済状況は、生産年齢人口に達した若者があまり長々と象牙の塔にとどまることをよしとしないきらいがある。まさか勉学に励むことに引け目負い目を感じる羽目になるとはね。母校にいたころには考えもしなかったねと、顔を見合わせて笑った。
 幸いなことに、生態学に興味をもってくれる後輩が散見されている。僕にとってそれはきわめてうれしいことで、自分なりにこの分野の面白さを伝えるようにつとめてきた。けれども、研究者という進路をおすすめするのはためらわれる。優秀な人材であればあるほど、ほかに稼ぎようはいくらでもあるし、自然や生物が好きだという適性を活かせる職種も決して少なくない。愛すべき後輩の人生設計を狂わせる責任の一端を担ってしまうのではないか、というのはあながち考えすぎでもないような気がする。
 とはいえ、ひとの心配より自分の未来を憂うほうが先だ。5年先、10年先の安心を約束できないのは各方面に申し訳ないし、何より精神衛生上よくない。精神不衛生な条件でもたくましく育っていきたいものである。
 ところで、お客さん二名を実験植物園へとご案内したところ、かつて所属していた部活動の記憶が仄かによみがえった。中高時代はみんなで博物館や動物園、山登りなどに行ったのだった。ひょっとしたらあの頃もそこそこ楽しかったのかもしれない。過去の思い出に浸りつつ将来を憂慮する。北関東の寒さは、沈思黙考に向いている。

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